2015.10.28

いきなりグループインタビューは危険


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グループインタビューは商業施設調査の中ではとてもポピュラーの調査ですが、だれの意見を重視するかきちんと定義しないと一瞬にしてムダな調査になります。

だれの意見を聞くか選択するのがポイント

だれの意見を聞くか選択するのがポイント

以前商業施設の改装のためのグループインタビューの分析を相談されたことがあります。約20,000平米、テナント数40店舗の市街地立地の商業施設です。

渡されたグループインタビューの記録は完璧です。10人の主婦は20代から60代で対象となる商業施設についての知識が豊富です。

ところが、この資料を持参した担当者は「結局どの意見を採用すればいいのかさっぱりわからない」というのです。

たしかに、情報は一見豊富なのですが、商業施設をリニューアルするのにどんなテナント誘致をしたらいいのか80ページ近いインタビュー記録をよんでもイメージがわいてきません。

このグループインタビュー、実施した調査会社は幅広い消費者の声を聞くことがよい施設のデザインなるというポリシーで実に様々な意見をもつ10名の主婦をインタビューししています。

ファッションが自分の趣味に合わない、食料品売り場の魚が高い。もっと鮮度のいい肉を入れていくれ。こどもと一緒に遊べる遊戯施設を充実させてほしい。惣菜を充実させてほしい。実に勝手気ままです。最後は集まった主婦同士で家族で行ったグアム、サイパンの自慢大会になっています。

コーディネーターの技量に頼るのはムリ

せっかくお金をかけて、精緻なインタビューをしているにもかかわらず有益な情報が取り出せない残念な調査の典型です。なぜ残念な結果になったかといえばインタビューの対象者が「自分たちの解決したい課題に対して有益な情報を持ちうる人たちかどうか定義していない」ところにあります。

これはどういう意味かとといえば、適切なヒトをピックアップして、余分な情報をそぎ落として、役立つ情報が引き出せるような手順を踏んでいるかどうかということです。そして集約された意見は、改装を検討している企業の担当者、決裁権を持つ人、施設運営者など利害関係者が理解でき共有できる情報になっていなければなりません。

そんなことはインタビューするコーディネーターの技量だと一般に考えられていますが決してそうではありません。コーディネーター自身がその商業施設の「現状」と「課題」を「利用者視点」と「利害関係者」の視点で正しく把握している必要があるからです。しかし、コーディネーター自身にこのような超人的な能力を要求するのはムリです。

大型商業施設には様々利用者がいます。毎日のスーパーだけを利用するひと。ドラッグストアと雑貨とカフェを利用するひとなどいろいろです。

ネットアンケートで集合知を利用する

ネットアンケートはこれらの問題を一気に解決してくれます。10年前まではネットアンケートはナショナルブランドを持つメーカが使う調査手法と考えられていましたが現在ではネットモニターの数も数千万人オーダーで、商圏調査にも十分実用になる回答者を集めることができます。しかも、3日ほどでデータを収集することができスピーディーです。

この商業施設でも実態把握のためにネットアンケートを実施しました。サンプル数は1年以内にこの商業施設を利用したことあると回答した300人を対象。そして、その300人を住んでいる場所と利用頻度、利用テナント、競合施設の利用、家族構成から典型的な4つのグループに分類しました。

明らかになった利用者象

4つのグループはA「足元商圏子育てヘビーユーザ」B「週末ファッションユーザ」C「通勤帰り利用者」D「クリニックや旅行代理店などを利用する団塊世代」となりました。

もっとも来館頻度が高いのがA「足元商圏子育てヘビーユーザ」で施設に対する不満や期待、励ましなど自由意見欄には実にさまざまなメッセージが記載 されています。まるでツイッターを読んでいるようです。そしてこのグループはGeodemo4「ホワイトカラーファミリー」地区に多く居住 しています。

B「週末ファッションユーザー」は都心のターミナル駅の大型商業施設も利用しておりまた近所には住んでいないのでターゲットにしづらいことは明らかです。また、自由意見に記載されている希望も「グッチ」「アルマーニ」などおよそテナントにならないブランドを希望する無責任な回答比率が高いのもこのグループの特徴です。

C「通勤帰り利用者」もGeodemo4「ホワイトカラーファミリー」地区の居住者でした。帰りの忙しい時間にワンストップで買い物ができるようなテナントを希望しています。

D「クリニックや旅行代理店などを利用する団塊世代」はGeodemo8「アクティブシニア」地区に多く住んでいますが利用頻度はそれほど高くはありません。

最終的には利用頻度が高いA「足元商圏子育てヘビーユーザ」をメインターゲットとしC「通勤帰り利用者」をサブターゲットとしました。どちらも共通する居住地はGeodemo4「ホワイトカラーファミリー」地区です。

共通の居住地クラスターでインタビューした人たちとアンケート回答者4グループを比べると…

このアンケート調査のあと、あらためてインタビュー記録を読み直してみるとグアム・サイパンの自慢話をはじめてのは一番声の大きかった60代の女性でしたが彼女の居住者クラスターは「アクティブシニア」地区。多くのひとは近所のスーパーで買い物、当該商業施設では喫茶利用が多くお金をたくさん使うというより時間を使う人たちです。

当然ターゲットとなるA「足元商圏子育てヘビーユーザ」とC「通勤帰り利用者」と共通する居住地区のインタビュー回答者の意見を注目します。そうしてみるとはっきりとあるべき商業施設のイメージが見えてきます。

子育て世帯の財布にやさしく、コンパクトにまとまったワンストップで利用できる食物販を中心としたテナントをそろえ、通勤帰りの買い物でも惣菜が小分けで買える。いきなりグループインタビューのそのまえに、是非ウェブアンケートを試してみてください。

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この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作