2017.08.31

いますぐできる商業施設のデザインに人工知能(AI)を生かす方法


いますぐできる商業施設のデザインに人工知能(AI)を生かす方法

人工知能をどの分野に応用すると効果が高いか?

商業分野へのAI導入は、来店者の顔認識や、ロボットによる接客など様々なアプローチが試みられていますが、お客様の満足度をAI接客で向上させるのは至難の業です。

顔認識や音声認識などこれまで人間が得意だった分野に人工知能を応用するのは話題になりますが、効果が出ずらい、難易度の高い分野です。

顔や音声を認識できたとしても、適切に対応するための仕組みが用意されていなくてはいけません。正しく顔や声を認識できてもトンチンカンな対応してしまったら元も子もありません。

この「対応」をデザインするためには「顧客」に対する深い洞察をAI自身が学習しておく必要がありますが、そのためにはかなりしっかりと予算と時間とテクノロジーを投入しなければなりません。

それに対して、商業施設の新規開発やリニューアルなどの分野へのAI応用は、この10年ぐらい盛んに試みられ、導入効果の高い分野と認識されるようになりました。

接客などのオペレーション分野と比較して商業施設計画分野への応用は人工知能のアルゴリズムが大活躍できる分野の一つです。

人工知能アルゴリズムといって一見複雑そうに見えますが、その本質的は二つのグループに分けて理解することができます。一つが「分類する」こと、もう一つが「予測する」ことです(下図)。

人工知能アルゴリズムと商業施設計画への応用分野

顧客理解への応用が最も実用的

顔認識や音声認識と違って人間が不得意なのが、等身大スケールを超えた現象の分類と他人との共有です。五感で簡単に知覚できない現象の分類問題です。例えば、「地域差」「土地勘」といったものや「消費者」「顧客」のグルーピングなどがそれに該当します。

商業施設のデザイン、コンセプトを決めるためにはセグメンテーション、ターゲティングが必須ですが、性別と年齢を軸にしたセグメンテーションはもはや機能しません。アマゾンをはじめとするネット小売りは、性別と年齢そして購買行動からセグメンテーション、いいかえると顧客をグループに分類しています。

この分類は、性別と年齢の2軸であればエクセルを使って分類することもできるかもしれませんが、いつ、なにを、いくら買ったかといったように分類するための変数が増えると、人工知能系のアルゴリズムなしには分類することができません。

この、顧客を分類するのに最もよく使われるアルゴリズムが、k-means(ケイ・ミーンズ)というアルゴリズムで「教師なし」機械学習アルゴリズムとして知られています。

似たライフスタイルのひとは、似た買物行動をする。性別と年齢だけでターゲティングすることはネット通販ではほとんどありませんが、リアル店舗ではまだ多くの店舗で、性別と年齢だけで顧客を分類しており魅力のない施設を作ってしまっています。

リアル店舗での人工知能技術の応用はまず顧客の分類から顧客洞察を得るのが常套手段です。「わかる」の語源は「わける」、つまり分類することによって特徴を明らかにする、行動の違いを理解することができるようになります。

データを重視した大型商業施設運営を実践している企業では、ポイントカードデータからテナント同士のつながりを見える化することにより、どのテナントとテナントが類似の顧客をシェアしているか、店長会でレポートを提供することにより、テナント同士のシナジーを引き出しています。

現場の「人間の知能」と「モチベーション」を増幅するほうが、下手な接客とトンチンカンな対応で話題作りをするAI導入より効果が高いのは言うまでもありません。

 

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作