2015.11.29

北陸新幹線開通と富山・金沢の商業環境への影響


今年3月に開通した北陸新幹線。先日日本ショッピングセンター協会中部支部・SC経営士会中部ブロック共催セミナーが富山県民会館で開催されました。コンパクトシティーの先進事例都市としての富山市。東京を起点に終点金沢に挟まれた富山へのトンネル効果(流入より流出が加速する)の影響などが議論されました。富山市によると北陸新幹線開業後、前年と比較し駅周辺の商業行ビル(CiC)売上・入込11%増加。市内の宿泊施設の利用者は10%増加。いっぽう駅から約1.5km離れた大和百貨店のある旧市街地の歩行者通行量はほとんど影響がなかったそうです。

富山駅前周辺と旧市街地との格差、金沢が富山駅前と競合?

富山市の小売り中心地のように新幹線駅と旧市街地が徒歩では遠く自動車では近い微妙に離れている街は城下町に共通してみられます。金沢駅と旧市街地の小売販売額(半径1km圏)を富山市と比較してみると、

  • 金沢駅(660億円)、香林坊のある旧市街地(1,520億円)
  • 富山駅(300億円)、総曲輪(そうがわ)旧市街地(700億円)

となります。金沢と富山、駅前と旧市街地それぞれ2倍近い差があります。富山市在住の知り合いのはなしではファッションを買いに行くなら金沢市といっていました。富山と金沢、新幹線で20分。富山駅周辺の商業集積地は金沢駅周辺の商業集積地と競合していることも意識する必要があるかもしれません。

地方都市に共通する駅隣接、市街地、郊外を使い分ける3つの消費者像

わたしたちが、これまで調査ししてきた地方都市の商業施設の利用実態からおおきく3つの消費者タイプが観察されています。

  • 駅隣接型商業施設利用者:学生や出張のビジネスパーソンや電車利用の比較的短い時間滞在する観光客
  • 市街地商業施設利用者:地元の高齢者・学生と比較的長く滞在する観光客
  • 郊外のショッピングセンター利用者:自動車通勤者、子育ファミリーなど大量購入とワンストップ性を重視するひと。バスで来館する買物ツアー客

同一世帯でも、普段通学に駅を利用する長女は駅周辺の商業施設、市の中心部に通う団体職員の父親は市街地周辺を利用、二男の幼稚園の送り迎えをした後に福祉施設に勤める母親は郊外のショッピングセンターを平日夕方使うといったパターンがイメージしやすいでしょう。

買物客のニーズに応えることのできる商業施設がデザインできるという意味では郊外のショッピングセンターや駅隣接型の大型商業施設は柔軟性があります。長野県軽井沢のアウトレットモールは駅隣接型で200店舗以上のブランドショップ、年商350億円(2012年 wikiより)、3500台近い駐車場が確保されているので自動車でのアクセスも良好です。郊外のショッピングセンターと比較して市街地への自動車のアクセス性の悪さは埋めがたいものがあります。

小売り販売額、東京23区合計値は富山市の約10倍141兆円

北陸新幹線を金沢から東京まで通過する主要な市の年間小売販売額「2015年市区町村のすがた」(総務省統計局)を列挙すると以下の通りです。

  • 金沢市 2.1兆円
  • 富山市 1.5兆円
  • 長野市 1.1兆円
  • 高崎市 2.8兆円
  • さいたま市 4.6兆円
  • 東京都23区 141兆円

金沢市よりも群馬県高崎市の方が商業規模は大きいのですが、人口でいえば金沢市19万人、高崎市15万人ですので金沢が4万人ほど多くなっています。

ところで、東京は23区の年間小売販売額は141兆円と富山市の約10倍の商業集積です。ちなみに新宿ルミネを中心に半径1km圏の商品販売額は1.3兆円。長野市よりやや大きい小売販売規模となっておりあらためて東京の商業集積が異常であること実感します。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作