2016.04.20

大型商業施設アンケート調査「役に立たない分析」その2


今回は大型商業施設のアンケート調査(来館者調査やインターネット調査など)で役に立たない分析のひとつ「平均値」に注目してみましょう。

大型商業施設では定期的に利用者の生の声を聞くために来館者調査やアンケート調査が行われます。苦労して集めたデータを集計して分析するときによく使うのが平均値です。「当社の商業施設に来館するお客様を調べたところ平均年齢は47.5歳でした。昨年と比べると1.5歳年齢が高くなっています」といったようなレポートを見たら要注意です。

大型商業施設を利用している人たちの全体像って?

そもそも来館者調査の平均年齢にどんな意味があるのでしょうか?来館者調査はサンプル(標本)のばらつきが大きい調査の一つです。商業施設のどの場所で聞き取りをするかで回答者の年齢や性別は偏ります。

平日と休日でも年齢にばらつきがあります。平日の午前中に大型商業施設にきているのは大抵は時間にゆとりのある高齢者です。休日の午後は子連れファミリーなど若返る傾向が一般的に見られます。

たまたまサンプリングされたデータから年齢の平均値を求めても、また昨年と比較してもなにか有益な情報を導き出すのは困難です。

平均値に意味があるとされる場合は、サンプル(標本)が母集団を再現することができるように完全にランダムに、つまり偏りなくサンプリングされている場合という条件になります。

「一部分から全体を理解する」別の言葉でいえば「サンプル(標本)から全体(母集団)を理解する」というのが一般的なアンケート調査を実施する目的です。ここでいう全体(母集団)とは「当該商業施設の利用者」ということになります。

しかし、大型商業施設を利用する人たちの目的や動機は様々です。サンプリングも来館者全体を代表するように偏りなくサンプリングすることはとても困難です。また、かりに全来館者を代表するように完璧なランダムサンプリングができたとしても、その集団を分析するうえで平均値はあまり有効な情報を提供してくれません。

特徴のあるいくつかの集団に分けてみると利用者像が見えてくる

その理由は、回答した人たちにはいくつかの異なる性質、来館目的、理由の顧客グループが混じっていることに起因します。大型商業施設の場合、ファッションを中心に利用する人、食品スーパーや食物販を中心に利用する人、レストランをメインに利用する人など様々な目的と動機で利用されます。

そこで、回答者をいくつかの特徴あるグループに分解してみるのが効果的な手法です。分類するというとすぐに思いつくのが性別、年齢ですが、多くの大型商業施設の顧客分析を実施してきた経験から、性別と年齢による分類はあまり有効な方法とはいえません。また、単純な来館頻度と利用金額による分類は、同一業種、業態の店舗(スーパーや専門店業態)では有効ですが、大型商業施設ではあまり役に立ちません。

大型商業施設で有効な方法は、買物の行動の違いや競合する施設の利用の違いから回答者を分類するする方法です。利用のされ方の違い、他競合施設との使い分けがわかることから、自社施設の強みや弱みを理解することができるようになります。そして、分類された顧客グループごとに年齢や男女比の違いを集計した場合、平均値は個性的な顧客グループの特徴を語る役に立つ指標となります。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作