2016.05.19

「東京どこに住む? 住所格差と人生格差」 速水健朗著(朝日新書)


5月19日現在 amazon 紀行文・旅行記カテゴリー第1位

「都市と消費とディズニーの夢 -ショッピングモーライゼーションの時代」で世界はショッピングモール化すると独自の都市論・地域論を展開している速水健朗さんの新著「東京どこに住む?住所格差と人生格差」を本日は紹介します。2000年以降の都心回帰現象を特に皇居から半径5㎞圏に注目して展開しています。当社の居住者クラスターデータについても言及しています。

団塊世代の居住地観を活写

「どこに住むか」といったテーマは世代によって意見が分かれます。都心から郊外へ移動するひと、郊外から都心に移動する人など「東京住民のそれぞれの引っ越し理由」で速水さんのご両親の事例が紹介されているので興味深く読むことができます。

ご両親は団塊の世代、速水さんご本人は1973年(昭和48年)生まれの団塊ジュニアど真ん中世代。両親と子供二人の核家族。ニューファミリー、サラリーマン家庭、母親は専業主婦でマイカー族とこの世代を代表するような家族構成です。

ただし、父親が転勤族だったのでマイホームは手に入れていません。そのため、定年後ご両親は完全に自由な立場でどこに住むかの選択ができその結果、東京都調布市->長野県菅平高原->石川県野々市市といった順番で引っ越したと書かれています。

Geodemo市区町村版でみる居住者の特徴

せっかくですので、それぞれの地域を居住者クラスター(Geodemo)市区町村版でみてみましょう。

東京都調布市

東京都調布市

東京都調布市の世帯数は約11万世帯。主要居住者は次の2つのグループです。

  • Geodemo1「都市部富裕層地区」60%
  • Geodemo2「市街地富裕層ファミリー」20%

都心に通勤、通学する人たちが多く住んでいます。速水さんのご両親が定年直後に住んでいた場所です。買い物には便利ですし、都心を利用する前提でしたら住みよい場所ですが、銀行員だったお父さんのロマンは「自給自足」。調布市にも市民農園など家庭菜園を楽しむスペースはありますが「自給自足」ちょっと厳しい場所です。

長野県上田市(菅平)

長野県上田市(菅平)

そこで白羽の矢が立ったのがスキーリゾートの菅平高原。菅平高原は長野県上田市に位置します。上田市の6万世帯における主要な居住者タイプは以下の2グループとなります。

  • Geodemo9「地方子育てファミリー地区」32%
  • Geodemo7「郊外外延部子育てファミリー地区」26%

銀行員のようなホワイトカラー系の就労者は少数派の地域です。菅平高原で丸太小屋と畑のある場所とのことですからおそらく別荘族が多いGeodemo08E「ゆとりのある高齢者戸建地区」に居を構えたのではとイメージされます。

ところが、大自然に囲まれた夢の「自給自足」の生活も厳しい冬の生活に耐えられず3年で引っ越しを決意します。大自然の中での生活には都市生活にも、また郊外にも全くない生活技術が要求されます。若い時の移住は勢いで乗り切ることができるかもしれませんか、退職後の居住環境の急激な変化は大変です。

石川県野々市市

石川県野々市市


最終的には、お母さんの故郷でお父さんのかつての赴任地だった金沢市に隣接する石川県野々市市へと引っ越します。この野々市市の世帯数は2.3万世帯。これまで住んできた市町村の中ではもっとも小さな市です。野々市市の主要な居住者クラスターは、

  • Geodemo5「ブルーカラーファミリー地区」61%
  • Geodemo3「シングル・カップル地区」21%

です。地方都市金沢市の郊外という位置づけで日本の地方都市におけるミドルクラスの人が多く住んでいます。ショッピングや病院などの生活インフラは過不足なくあり、気が向けば金沢の中心地にアクセスして買い物や高度な医療を受けることも可能です。

「東京どこに住む?」では「集積」「横丁」「近接性」「食住接近」などをキーワードにこの10年ぐらいに再発見された都市の魅力について迫っています。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作