2016.06.06

移動コストにシビアになる消費者・語らない消費者


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意外と知られていないのが大型商業施設の顧客像です。様々なテナントが入店しているので利用者もその動機もバラエティーに富んでいます。よく施設での滞留時間を長くすると一人当たりの買い物点数が増え、売上向上につながるといわれていますが実態はどうもそんな単純ではなさそうです。今回はアンケート調査から見えてきた大型商業施設の利用実態をみてみましょう。

大型商業施設「滞在時間」と「客単価」は比例しない

大型商業施設のアンケート調査でよく見かけるのが「滞在時間」を聞くタイプのものです。「滞在時間が長ければ買い物点数も増えるはず。だから滞在時間を聞いて、昨年と比較してみる」とうものです。「滞在時間」と「買い物金額」の間に相関があるはずだという前提ですが、実際しらべてみると明確な相関はでてきません。

1997年ごろまでは商業施設の売場面積と小売販売額は比例して伸びていました。ところが97年を境に売場面積が広がっても小売販売額は反対に減ってしまうようになりました(下図)。

広がる需給ギャップ

経済産業省 商業統計(2007)

商業施設の数が少なく需要が旺盛だったときは長く滞在してもらうことによって買い物点数が増えたかのしれません。2000年代前半に開発された大型商業施設には構造を複雑にし導線を長くしたものが多くみられました。

最近の大型商業施設のアンケート調査からは複雑な構造や導線の長い商業施設は敬遠される傾向がみられます。施設数が増え使いやすい商業施設が増えるとそちらの商業施設選ぶようになるのは自分自身の買い物行動を思い出してみても納得できます。

若い世代は遠方まで出かけて買い物をしますが年齢が高くなるにしたがって移動距離は短くなります。住宅街のコンビニエンスストアで平日の昼間に歩行補助機を使ったお年寄りがお弁当を買っているシーンを目にすることがありますが、これなどは年をとると移動距離が短くなる極端な事例です。

近いから利用する・シビアになる移動コスト

大型商業施設の場合、利用のされ方はいくつかのパターンに分かれます。このパターンは多くの場合近接性と関係しています。「なぜこの商業施設を利用するのですか?」とアンケートをしてみると「近いから」という回答者が多いのにいつも驚かされます。自宅から近い、あるいは学校、勤め先から近いとうことは重要な利用動機となっています。

ネットショッピングが発達すると買い物自体はスマホで済んでしまいます。距離的制約のない買い物に消費者全体が慣れてくると使い勝手が悪い、探してる品物がすぐに見つからない、ほしいものがない、時間がかかるなどそこにゆくまでのコストに対するストレスはますます増大してゆくでしょう。

ほしいものがないから・なにも語らない「非来館者」

大型商業施設のアンケートを実施して「なぜこの商業施設を利用しないのですか?」と質問するとほとんどひとが「用がない」「ほしいものがない」と回答します。「非来館者」になにか質問すればきっとヒントになることを教えてくれるのではと期待して調査を実施しても肩透かしをくらってしまいます。もともと関心のないことについては人は語りたがらないものです。

顧客は複数の商業施設を使い分けている

顧客は複数の商業施設を使い分けています。ですからなんとなく使いずらい商業施設は自然と利用されなくなります。商業施設アンケート調査を単純に「満足度」「来店理由」「来店しない理由」だけを聞いても「選ばれる商業施設」づくりはできません。
選ばれるための商業施設のためのアンケート調査についてはぜひこちらをご参照ください。

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この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作