2018.02.28

AI活用で「魅力的」な商業施設をデザインするために


2月22日(木)に開催した東京大学山崎研究室との産学連携研究の中間報告セミナーでは、70名以上の方に参加いただきました。山崎俊彦先生の「魅力工学」についてのお話の後には、名刺交換するために長蛇の列ができ、出席した商業デベロッパーの方々との意見交換が一時間近く続く、すごい熱量を感じるセミナーとなりました。

そもそも「魅力」とはなにか

商業施設計画では、現在でも盛んに利用されている集客予測モデルにハフ・モデルというものがあります。集客力は施設の魅力に比例し、そこに行くまでの移動コストに反比例するという1960年代に考案された「消費者選択モデル」です。その原型は、19世紀後半の英国人ラベンスタインの「人口移動の法則」にその起源を求めることができます。

ラベンスタインは、英国において都市間の人口移動の統計データから、人口移動は「都市の魅力」に比例し、距離に反比例していることを発見します。当時「都市の魅力」は仕事があることでした。地方から都市への出稼ぎ労働者、植民地から英国にやってくる移民など、その動機は「仕事」があるという都市の魅力でした。

この人口移動の法則を、商業施設の選択行動に応用したのが米国人経済学者デビット・ハフでした。この場合、商業施設の「魅力度」は施設の「規模」となります。規模が大きければ集客力がある。このモデルが考案された1960年代の米国では、自動車が普及し、チェーンストアオペレーションで均質なサービスを提供する大型店舗が次々と開発された時代でもあります。

商業施設、まちの「魅力」を再定義する

今日、アマゾンドットコムの取り扱うアイテム数は3億6千万アイテムといわれています。一般的なスーパーマーケットで取り扱う商品数が10万点ですから桁違いの選択肢を提供していることになります。しかも、スマホから指先で注文することができるので、移動コストはほぼ0となります。リアルの店舗がネットショップと共存するためには、ネットショップにない「魅力的な体験」をいかいに提供できるかがポイントとなります。

「魅力」の定義は人によって異なります。多様化した価値観とライフスタイルのなかでいかに「魅力」を理解し提供するかといったことを悩んでいたところ、山崎先生の研究と出会い、共同で商業施設の魅力度をアップするためにSNSから収集したビックデータとAI技術を使って、明らかにしようということでスタートしたのが今回のセミナーでご紹介したプロジェクトです。

「魅力」を理解し、定義し、共有するためには、その「魅力」を評価している集団を観察することがポイントとなります。SNSデータは、魅力を理解するための「集合知」として実用的に利用することができるのではという、その可能性を検証する研究です。

魅力工学についての詳細はこちらを参照してください。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作