2016.02.21

いきなり競合店調査は危険 -類似商圏調査(商圏ベンチマーキング)のススメ-


商業施設プランナーにとって競合店調査は必須の調査です。しかし「ものさし」を持たずに競合店調査をすると独りよがりな調査となり学べる情報量が極端に減ります。
「商圏ベンチマーキング」の手法では、立地環境が同じ競合を調査することに重点をおいています。同じ環境ですから、見聞きしたことはそのまま自分のお店に反映させることができます。同じ境遇(立地環境)ですから多くの点で共感することもできます。

競合店調査はビジネスモデル調査

競合店調査を実施する動機には3つのタイプがあるといわれています。

  • 他社の強みを学ぶ
  • 他社の弱点を学ぶ
  • 自社の差別化を探る

この3つの強み、弱み、差別化を考えるうえで同じような施設サイズで、似たような立地にある施設を観察することがとても重要となります。ある立地というのもビジネスモデルの重要な要素です。小さな市場の田舎立地ばかり出店するホームセンターのコメリやケーズデンキなどがそのいい例です。
似たような立地の定義するには一般に以下の3つの条件が近いことがポイントです。

  • 需要環境が似ている
  • 供給環境が似ている
  • 競合環境が似ている

需要環境が似ているとは似たような人が同じぐらいの数住んでいるということ

「人口の量と質と分布が似ていること」=「需要環境が似ている」と定義できます。厳密に需要環境を定義すると、需要が発生する地点(インターチェンジ、駅、空港などの交通網の配置も考慮しなければなりませんがここでは割愛します)人口の量と質を把握するうえで便利なものが居住者クラスター(Geodemo)です。また、昼間人口(就業者人口)の類似性も比較できると助かります。

供給環境が似ているとは小売販売額の規模が似ていること

周辺の商業環境規模が似ていることも重要です。経済産業省が提供している商業統計は、日本全国の小売販売額を500mの升目(メッシュもしくはグリッド)で提供しています。このデータを使うと商業集積の様子がわかります。
新宿、有楽町など大きなターミナル立地ですと半径1km圏で1兆円/年の売上がありますが、売場面積50,000平米ほどの地方の単館SCですと200-400億円/年ぐらいになります。
どのような小売業が集積しているかも供給環境を知る上では重要です。SCのような複合型の商業施設が多いのか、小さな飲食店が集積しているかのロードサイドの店舗が多いのかといった情報です。

競合環境が似ている

競合環境では同業他社ばかりが競合ではありません。周辺の小売中心地も重な競合です。小売集積地同士の競合を「中心地間競争」と呼ぶこともあります。巨大な小売中心地の新宿と渋谷の間に挟まれた表参道と原宿は規模こそ小さいながら個性的な中心地として存在感があります。中心地間の競争環境で中心地の個性も生まれてきます。
さらに中心地内部でも競争があります。ただし規模が大きい中心地内部では同業他社が複数出店していることにより消費者にとって魅力的となります。消費者にとって魅力的な「競合環境」は「集積」と言い換えることができます。適度な集積は買いものをする人にとって選択肢が増える、あるいは賑わいがあると認識されるようになります。
競合他社の適度な集積はすでに大きな市場があるいことになります。

SCクラスター3000は日本全国のショッピングセンター3223箇所を商圏の質と量、周辺にある大型商業施設の分布、人口増加のトレンドがわかるなど類似商圏調査(「商圏ベンチマーキング」)に必要な指標がコンパクトにまとまっています。SCの比較研究にぜひ活用してください。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作