2016.05.13

大型商業施設の役に立たない調査シリーズ その3


大型商業施設の役に立たない調査シリーズの第3弾として「シェア」に注目してみましょう。シェア調査の中で人気なのが「認知度調査」です。ところが、大型商業施設でこの認知度を一生懸命追いかけてしまうと広告宣伝費は天井知らずとなってしまいます!

飽和する認知度

売上があがらないその原因を「認知度」が低いからという理由で認知度調査を熱心に実施してる商業施設をを時々見かけます。また「認知度が上がれば売上が上がる」という素朴な考えに基づいてチラシ配布を欠かさない施設もあります。PR会社や広告代理店がデザインするアンケート調査ではこの認知度は非常に重要な調査項目となっています。

まだできてから数年の新しい商業施設でしたら広告で「告知」して「認知」させることは重要ですが、10年近く経過した商業施設が「認知度」調査を実施するのは再考が必要です。すでに一定の地域で認知され利用されている訳ですから、同じエリア内で調査を実施した場合、認知度の延びは鈍化します。

はじめの数年は「認知」されることイコール「売上の増加」となりますが、時間が経過するにしたがって「認知」度が増えても「売上」は増加しなくなります。「認知の飽和状態」という現象です。

商圏を広げるのか深堀するか?

現在の商圏範囲内ではすでに知れ渡っているのであれば、いまの商圏より広いエリアに告知して集客しようという考えはとても魅力がありますが、オーバーストアの現状では集客圏を拡大することは容易ではありません。

どうして簡単でないかといえば、もし2つの商業施設のどちらを選ぶかは、同じ商品・サービスであるならばできるだけ近くの商業施設を利用しようとしますし、一方にしかない特別な商品・サービスであれば遠くてもそちらの商業施設を利用するでしょう。

すでに広く知れ渡っている商業施設が次に考えなくてはいけないのは「認知度」の向上ではありません。一世帯あたりの「お財布占有率(share of wallet)」の追求が重要となってきます。

「まだ来たことのない来館者」と「お財布占有率」との関係

「まだ来たことのない来館者」を知りたいというのは商業施設運営者の本能的な欲求です。アンケートを実施するとき最も多いリクエストです。

「まだ来ない来館者」のそのイメージは、「石田さんはいつも当施設をご利用いただいているがそのお隣にお住まいの佐藤さんはまだ利用したことないようなのでチラシでお買い得情報を提供すれば新しいお客さまになっていただけるのではないか」というものでしょうか。

「本当の新規顧客」のイメージとしては間違いでではありませんが、もうひとつの「来ていない顧客」の定義があります。

それが、「すでに認知されている世帯のなかからもう一人、あるいはすでに利用している私の中のもう一人の私に利用してもらう」という考え方です。一般にこれは「お財布占有率((share of wallet)」といい、自社の商業施設でどれだけ多くの世帯の可処分所得を使ってもらうことができるか、使っていただけるようなテナント構成にするかという考え方です。

この問いに答えるためは「既存顧客の利用実態」の把握が重要となります。既存顧客の利用実態が理解できてはじめて現状の売上を向上させるための施策が見えてきます。次回はアンケート調査の本丸「既存顧客の利用実態」をどのようにとらえればよいかに焦点をあててみます。

この記事の執筆者
酒井 嘉昭

酒井 嘉昭

代表取締役

技術士(環境部門)測量士 日本大学文理学部地理学科卒業 都市計画、防災・環境計画の土木計測のエンジニアとしてキャリアをスタート。 英国のデータ分析会社GMAPの上級アナリストから日本ジーマップ代表取締役に。分社化に伴い現職。居住者クラスター分類ジオデモの開発者。主要な著作